「ナカメキノ」vol.6『東京物語』を開催しました。

2013.7.9 11時46分
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毎月1回(たいてい月初の土日どちらか)、中目黒で無料上映&トークイベントを展開する「ナカメキノ」という企画をやってます。面白い映画を大きなスクリーンで無料で観ていただき、映画と中目黒をもっと好きになってもらおうという企画で、ありがたくも毎回満席で、観客の皆さんからも、映画業界からもご好評いただいています。

 

7月7日(日)七夕に、この「ナカメキノ」vol.6を開催してきました。上映作品は小津安二郎の世界的名作『東京物語』。10年に一度、世界中の著名な映画監督や映画批評家の数百人が全年代全ジャンルの中から最も優れた映画を選定するSight&Sound誌の2010年のオールタイムベストの映画監督が選んだ映画で世界1位、映画批評家が選んだ映画で世界3位という、とてつもない結果を出した全映画ファン必見の1本です。

 

しかし、本作が公開されたのは1953年。つまりかれこれ60年経っていて、特に若い人たちは観た事がないどころか、小津の名前も作品の名前も知らない一本とも言えるのです。今回は松竹さんの協力を得て、小津生誕110年記念で制作されたニューデジタルリマスター版を上映する事ができました。画質音質ともに格段に向上しており、非常に観やすくて感動も深まる素材です。

 

ただ、前述の通り、この小津安二郎という監督の、日本における若者への知名度は相当低く、そもそも白黒の映画なんかを観たことない人が多数な状況下、しかも炎天下で果たして本当に人が集まってくれるのかと多少、心配にはなっていました。しかし蓋を開けてみれば、見事に満席。しかも若い人が相当数を占めている状況でした。しかも非常に意欲的に観ていただき、満足度も高かったようで、嬉しい限りでした。

 

小津の映画は、わかりやすいけれど、近年の邦画のテンポから比べるとやはり間を取っているし言葉にしていない心情は多いんだけど、その行間にこめられている心情をきちっと汲み取っている人が多いように思いました。そんな様子を見ているうちに、今回のトークショーでご一緒した『アフロ田中』の松居監督が言っていた「日本は大丈夫」だという言葉に強く共感できました。

 

そして、今回、サプライズゲストで、映画番組でも長年共演している盟友、俳優の斎藤工くんが上映前トークショーに飛び入り参加してくれました。ドラマの撮影スケジュールがたてこんでいて、参加が難しい状況ではあったのだけど、少しの隙間を縫うように、上映前だけでも、ということで参加してくれました。こういう瞬間を何度も見ていて、彼の映画愛はハンパないと毎回痺れます。ちなみに斎藤工くんのオールタイムベストは、小津安二郎の『お早よう』です。

 

もうひとりのトークゲストの映画文筆家の松崎“B”健夫さんは、相変わらずの尋常ならざる映画知識と見識で、『東京物語』の、画面の左から入る行動の不穏をはじめ、小津安二郎のブランド戦略から原節子のその後まで仮説を膨らませつつ、観客に大きな示唆を与えていたと思います。これは余談ですが、彼の今後を注目していただきたい。日本をけん引する映画評論家になると思います。

 

自分自身は、小津安二郎の描写の中に垣間見える、観客への信頼、のようなものを話しました。そして、60年という月日が経っても、色あせず、未だに世界から評価され続ける小津、『東京物語』という古典の強度について、少しは伝えられたかなと思います。白黒だろうが、カラーだろうが、つまらないものはつまらないし、面白いものは面白いということが少しでも理解してもらえて、過去の名作に手を伸ばす人が一人でも増えると良いなあと思います。

 

次回の「ナカメキノ」は8月3日(土)に開催しますので、是非、ご都合がつけばご参加いただけると嬉しいです。『桐島、~』風に言うと、次回の「ナカメキノ」、結構頑張ってますよ(笑)

 

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写真下 左から松崎健夫さん(映画文筆家)、松居大吾さん(映画監督)、斎藤工さん(俳優)、中井圭(映画解説者)

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