こんにちは、映画解説の中井圭です。2013年に劇場公開された映画の中で、観ておくべき作品をまとめました。このあたりを観ておけば、だいたいOKだと思います。ベストテンを除いて、誰もが観ているようなメジャー系作品は省いてあります(『風立ちぬ』のようなもの)。何かのご参考になれば。
<中井圭的映画ベストテン2013>
第1位:『ゼロ・グラビティ』、事故で宇宙を漂流する女性の、たった91分の生命をめぐる壮大な旅。長回し等の圧巻の映像世界を手段として、生命と再生の物語をメタファーで描写。本作の意義は映画が総合芸術であることを誰の目にも明らかにした点も。映画史を塗り替えた数年に一本の完璧な映画。
第2位:『エンド・オブ・ザ・ワールド』、同じ隕石衝突でも、ハゲたおっさんたちが地球滅亡を食い止めようとするマッチョな娯楽映画ではなく、市井の人たちが避けられないその日をどのように迎えるのかを描いたささやかな終末映画。我々にもいつか訪れる最後の日を想って、死ぬほど恋がしたくなる。
第3位:『きっと、うまくいく』、バラバラになってから10年が経ち、再会の場に現れなかった男を追う友人たちの旅は、かつての友情と青春を辿る旅となる。インド映画らしい長尺ながら、埋め込まれた伏線が明らかになるとき、時間を忘れるほど清々しい映画体験に。合言葉はアールイズウェル!
第4位:『建築学概論』、気持ちはあれどもすれ違い、叶えられなかったかつての想いを、大人になって、家と共に建て替えようとする男女の物語。90年代と現在を巡りながら、誰しもが経験した初恋の甘酸っぱさとほろ苦さと追体験してのたうちまわる、今年最高の悶絶映画。みんなスジに恋をする。
第5位:『横道世之介』、自己は自らが定義すると同時に、他人の記憶の中でも生き定義される。本作は他人の記憶の中で生き続ける憎めない男の物語であり、自分の周りにもいた世之介たちを想起させる。沖田修一監督のゆるやかで微笑ましい世界が完璧にハマり高良健吾と吉高由里子のベストワークとなる。
第6位:『ウォールフラワー』、人は誰かを支えているようで、誰かに支えられている。壁の花でいることを抜け出そうとする、問題を抱えた孤独な青年と、そんな彼を受け入れる、少し変わった素敵な兄妹。その3人の関係性の誕生と完成を、ラジオから流れてきた“完璧な曲”を鍵として描く演出も見事。
第7位:『わたしはロランス』、心情描写にリンクして部屋の中に水が流れ、空からカラフルな服が降ってくる。画面はスタンダードで、ふたりの世界を切り取っていく。グザヴィエ・ドランが24歳にして生み出したのは、ジェンダーの壁とぶつかり、もがき、それでも生きていこうとする男と女の愛の物語。
第8位:『あの頃、きみを追いかけた』、本作で描かれたのは、今年最高のキス。映画だからこそ描けた奇跡のキスのカタルシスに、涙を堪える事ができない。そのキスが美しく心を動かすのは、悔やみきれない決定的な後悔から、一歩先に進む強い意思に溢れているから。タオル必須の感涙映画。
第9位:『地獄でなぜ悪い』、運や才能の有無ではなく、狂うほどに追い求め続けることでしか辿り着けない世界がある。ラストシーンで、カットがかかってもなお映しとられる数秒感に、この極端な映画的ファンタジーと我々が生きる現実が地続きであることを見せつけられて、涙が溢れ出した。
第10位:『クロニクル』、繊細で心に鬱屈を抱えた10代の青年が、偶然、超能力を持ってしまったことで巻き起こる惨事をフェイクドキュメンタリー形式で描く。心の動きは誰にでもあるものだけど、人間の能力を拡張したが故に、その悲劇も拡張されていく。映画はアイデアでいくらでも面白くなる好例。
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<中井圭的映画ベストテン2013に入らなかったけど遜色ない映画>
『鑑定士と顔のない依頼人』『女っ気なし』『ホーリー・モーターズ』『みなさん、さようなら』『フラッシュバックメモリーズ3D』『セデック・バレ』『君と歩く世界』『ペコロスの母に会いに行く』『スプリング・ブレイカーズ』『ハナ 奇跡の46日間』『LOOPER/ルーパー』『愛、アムール』『恋の渦』『危険なプロット』『ホワイトハウス・ダウン』『百年の時計』『偽りなき者』『熱波』『もうひとりの息子』『ラストスタンド』『かしこい狗は、吠えずに笑う』『ムード・インディゴ うたかたの日々』『パリ猫ディノの夜』『凶悪』『キャビン』『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』『麦子さんと』
※こちらは誰もが観てるようなメジャーは省きました。