『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』
STORY
米デトロイト。寂れたアパートでひっそりと暮らすアダム(トム・ヒドルストン)は、何世紀も生き続ける吸血鬼。その姿を隠し、アンダーグラウンド・シーンでカリスマ的な人気を誇る伝説のミュージシャンとして生きている。彼が起きて活動するのは夜間だけ。年代物のギターを愛好し、名前を発表せずに音楽を作る。必要な物の多くはイアンという男に調達を任せている。そして時折、自ら素顔を隠して医師ワトソンの病院を訪れ、極秘に血液を手にいれていた……。 そんな彼に、ある夜、懐かしい電話が掛かってきた。永遠の恋人、吸血鬼のイヴ(ティルダ・スウィントン)からだ。モロッコのタンジールに滞在していた彼女は、やがてパリ経由で夜間の便を乗り継ぎ、“リュミエール航空”でデトロイトへ。アダムのアパートで二人は久々に再会を果たす。
80年代中盤に、日本でジム・ジャームッシュブームが起こった。当時、ハリウッドで流行したMVのような映画とはまるで文法が違う『ストレンジャー・ザン・パラダイス』の登場。メインストリームにカウンターをかますジャームッシュを観ていることが、スタイリッシュで、オシャレな、そんな時代だった。映画はカッコ良かった。
そんなジャームッシュ節は、本作『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』でも健在。相変わらずのオフビート感覚を、吸血鬼というフォーマットに載せてくるのも、ウィットに富む。我々が観てきたおなじみの吸血鬼映画とは違う、ジャームッシュらしい、どこまでもオシャレで退廃的で、メタな仕上がり。夜を舞台にしたそのルックが、抜群にカッコいいのだ。もちろん、ジャームッシュが愛する文学が、音楽が、本作に詰め込まれている。吸血鬼映画に、トム・ヒドルストン、ティルダ・スウィントン、ミア・ワシコウスカをキャスティングするあたりのずば抜けたセンス!単なるジャンル映画を撮るつもりなど毛頭ない、というジャームッシュ一流の宣言を思わせる。
ブームから30年近くの月日が流れ、今や日本で、映画を観るという行為自体、特別な意味を持たなくなった。あれほどカッコいいものだった映画は、少しずつ、だが確実に滅びの道を歩みつつある。『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』でジャームッシュが描いたのは、自身同様、長年アウトサイダーであり変わらず高潔な者たちのサバイバル。世の中が激変し、どんどん崩れていく中、どうにか自分たちの立ち位置を守り抜いてきた吸血鬼たちも、いよいよ追いつめられていく。財政的に破綻したデトロイトが舞台となったその皮肉も、ゆるやかに滅びゆく現代の映画と、本作の吸血鬼たちにシンクロするかのようだ。
それでもジャームッシュは変わらない。相も変わらずこんな映画を作り続ける。だからこそ今言いたい。ジャームッシュはカッコいい。そして、映画はカッコいいのだ。往年のファンは勿論、若者たちにこそ観てもらいたい一作だ。映画の存在を再認識して欲しい。
『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』
“『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』” への21件のコメント
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『パスト ライブス/再会』
お問い合わせ/映画の天才委員会(中井圭・石田文子・田尻博美)
個人的に久しぶりのジムジャームッシュの映画でした。80年代の彼の作品は全て観ていたし
ミュージックPVの長編的な感じが好きで、音楽をベースにリリックみたいななストーリーが展開される。映像的にカッコいい。スタイリッシュ。当時そう思ってた。
今回もジムジャームッシュ節が美しいヴァンパイアのカップルを通して展開された。
相変わらず音楽を感じる映像で撮影場所や小物一つ一つに監督のこだわりが感じられる映画でした。
これはもう、わたしには堪らない世界。
退廃的ムード、音楽、夜、吸血鬼、LOVE、高尚な趣味やアンティーク。そして背徳的なロマンス。
ロック大好きティーンズgirlが必ずハマるものばかり。
ゴシック寄りでなく、質の高いイヴの衣服やセンスに陶酔。
舌づつみをうつご馳走の血の味の表現や、美しい言葉や知識、音楽、映画を見ている間にとにかく全ての文化のシャワーが気持ちよくてトランス状態。
ずうっと浸っていたくなる甘美な世界でした。
アダムとイヴの現代へのオマージュが、しっかり残る作品でした。
彼らに飲まれたい極上の血を纏いたいですね。
21世紀の今を普通に生きる吸血鬼の日常。タイトル含めてラブストーリーかと思いきや、恋人との関係はリアルな生活感を醸し出すための日常の一部として描かれる。
「75年前のパリのことまだ怒ってんの?」「いやいや、15世紀じゃないんだから」..という台詞も、ミュージシャンとして成功しちゃっている設定も、人間を「ゾンビ」と呼ぶのも(いや、君たちでしょ)、クールなのにユーモアがあるお家芸。
今の時代、生きづらいのは吸血鬼も同じ。汚染されていない血も手に入りづらいし、死体も捨てにくくなったものである。ただ、長く生きているからお金は自然に貯まっちゃうのである。
周りから取り残されているような気分は、誰しもある。咬まれないように少し緊張感を保ちつつも、そういう孤立感にそっと寄り添ってくれる年末年始向けの映画かもしれない。ギターおたくは必見。
ジムジャームッシュの映画は、映画館で見なくちゃって気がして、今までの作品も出来るだけ映画館で見ています。
動く画と音楽、会話も含めて、薄暗い映画館で、人の気配を感じながら空気を共有してる感じを楽しめるからです。(かといって、家でDVDで見るジムジャームッシュも嫌いじゃない…)
今回も、期待を裏切らず、「静」でした。
突拍子もない設定で、起こってる事も他の人が描いたら、仰々しく描くだろう事を淡々とただの出来事を語るかのように描いてる。
好きです。
後にひくような、余韻を楽しみました。
世を憂う「オフビート」詩人の名人芸。
吸血鬼さえも生きづらい、現代のおとぎ話。
吸血する血液が汚染されているなんて、なんて強烈な皮肉だろう。
主人公ふたりのたたずまいにずっと見とれてました。
数々のビザールギターにも目を奪われ。。
全体通して厭世的なムードの中
場違いのような(?)ソウルの曲がかかって
ふたりが踊る数分間が幸せだった。
いつの世でも、悲しみや憂鬱を癒すのは音楽だと。
そう言っている気がして、勝手に激しく同意しました。
ジム・ジャームッシュってすごいですね。
人から何言われても気にしないんだろうなぁ、(生みの苦しみはあると思うけど)、これ作りたいから、作ってる、かっこいいでしょ。はい!かっこいいです!付いていきます!って感じです。この良さが分からないなら、こっちが格好悪いんじゃないかという気分にさせられます。
大人な映画でした。
スウィントンが本当に美しいです。
音楽もめちゃめちゃよかったです。
iPhoneを使い、Youtubeをみるヴァンパイアってシュールで好きでした。
コーヒー&シガレッツしか観たことなかったのですが、ほかの作品も観たくなりました。60歳で、このオシャレさ。生まれてから死ぬまで、ずっとオシャレな人なんだろうな。
ジムジャームッシュ節炸裂な映画でした。
使い古された「吸血鬼」というジャンルが、
スタイリッシュに描かれていて、斬新でした。
監督の音楽・文学への愛が全編に描かれています。
彼からしたらゾンビである我々も、彼ら吸血鬼も生きにくい世の中なんでしょうね。
それと、衣装・小道具の美術がすばらしいと感じました。
トム・ヒドルストン32歳で
ティルダ・スウィントンはなんと53歳なんですね。
不老を地でいってます…。
ジャームッシュは
まるでヴァンパイアのようだ。
あの風貌も、長く貫かれてきた映画的話法も。
21世紀における、吸血鬼の日常。
すごくリアルだし、ブラックユーモアが効いていて
不思議な感覚になりました。
これが、ジム・ジャームッシュ監督作品の初体験。
ほかの作品もみたくなりましたし、
こういう作品を観ることで、より人としても
新しいことを始めていく上でも深みが増すのではと
思いました。
昔、いわゆるオシャレに憧れてジムジャームッシュを観てたイメージがある。
ジムジャームッシュを観てたら、オシャレだろ的な。
もう今や、オシャレなんてどうでもいいというか、おっさんになってるんだけど、
久しぶりに観て、ジムジャームッシュて、やっぱりオシャレな画を作るよねって思った。笑
この映画って、セリフを全部なくして、映像と音楽だけで観ても楽しめるんじゃないだろうか。
ちょっといい音響で、酒を飲みながら観たい。
この映画、前評判の段階ですでに「オシャレ」とか「カッコイイ」なんて感想が出回っていて、
もっと他に言うことあるだろーなんて思いつつ試写に臨んだのですが、
なんなんでしょう、この世界観。やられました。
楽器・服飾・家具雑貨等のディテールもさることながら、セリフ、街並み、夜の闇までとにかくどのシーンを切り取ってもカッコイイのなんの。
トム・ヒドルストンとティルダ・スウィントンの演じる吸血鬼は神々しいまでに妖艶だし、
まさにこれ、人類を超越した上位の存在「吸血鬼」そのもの。
シェイクスピア、シューベルト、ニコラ・テスラといった実在した偉人との関わりなんかも会話の節々に見えて、知的好奇心までも刺激してくれる。それ知ってるオレってもしかしてカッコイイ!?的な・・・、にくいね、ジャームッシュ!
結局のところ「おしゃれ」とか「カッコイイ」っていう感想がメインになってしまうかもしれませんが、それをうまく言い換えるような表現は評論家に任せて、
ワイルドとかハードボイルドとかトレンディといった単語をまくし立てつつ、
この甘美なる世界観に酔いしれてしまえばいいと思います!
美しすぎるバンパイアと退廃的な世界感のスタイリッシュさに衝撃。若い頃、メンズノンノしか読んだこと無かった自分が、背伸びして初めてハイファッションを買ったときの衝撃(?)と重なりました。
そんないちいちオシャレでスタイリッシュな映像のなかにも、生きづらい現代にどうにか適合しながら生きるバンパイアの悲哀がユーモラスに描かれていて、吸血鬼なのに吸血行為を禁じられて代りにトマトジュースを飲んでいた「怪物くん」のドラキュラを思い出しました。
あと、タンジールが舞台だったのでモロッコへの憧れがまた強まりました。
ゆるやかな時間、低音の効いた良い音楽とアンティークなお洒落空間。この映画は夜に観るべきだな、と感じました。
(ヴァンパイアだから、夜のシーンばっかりだし)
21世紀にひっそりと生きるヴァンパイアのお話。
永く生きてきた彼らはとても知識が豊富で、魅力的。とにかく本当に、魅力的。
友達になりたいな、だなんて呑気なことを考えながら観ていました。
個人的にぐっときたポイントは、イヴがiPhoneを使いこなしていたこと。当たり前のように15世紀はああだったこうだった、いまは21世紀なんだからああだこうだ、という会話が繰り広げられていたこと。
あり得ない世界観なはずなのに、観ているうちにうっとり、どっぷり浸っていってしまいます。気持ちがよかったです。
人間たち(彼らいわく、ゾンビ)は、自分で自分の血を汚している、というのも印象的。
美しく生きたいものです。
お酒は苦手だけれど、お酒飲みながら観れたら素敵だなあ。真っ赤な血のようなワインを片手に。
音楽も美術も映像もすべてがかっこいいけど、
とにかくキャスティングが秀逸!
イブ役のティルダ・スウィントンの佇まいにずっと見惚れてました。
彼女、今年のシャネルの広告も出てますよねー。それもめちゃかっこいいし。
生まれ変われるなら、あんなスタイリッシュな女に生まれたいなー。
あ、奔放な妹役のミア・ワシコウスカもすっごく良かったです。
ティルダ・スウィントン53歳(!!!)
ジム・ジャームッシュ60歳
大人がかっこいいって、ほんと素晴らしい。
2人とも、持って生まれたおしゃれ感がにじみ出てるタイプの
人間というか、いちばん憧れる人種の人たちだなー。
こういう人に「ダサいね」って言われたら、
もう立ち上がれないと思います。
とても現代的でスタイリッシュなヴァンパイア映画
厭世的な天才音楽家のアダム、大人の魅力満載なイヴの吸血鬼カップルが、離れて暮らしながらもお互いの愛情を信頼して生きている姿が本当に素敵
燻したような色彩の中で、貴重な血を小さなグラスに注いで恍惚と牙を見せて味わう吸血鬼はとても美しい
吸血鬼の永い生命のように、ゆったりとした時間を感じられるひとときでした
ドラキュラ映画というフォームを使っているだけで、ここにはやはりジャームッシュがずっと描いてきたマイノリティたちの物語がある。
ラブストーリーやドラキュラ映画、そして「ジャームッシュ的映画」が陥りやすい罠を、あらゆる映画的な誠実さをもって、回避していくジャームッシュの熟練された手際が光る。
ヴィンテージのギターや機材、その他美術もたまらない。
私にとって初めてのジムジャームッシュ作品でした!
が、すでに好きな監督になりました!
だって吸血鬼にアンティークのギター持たせるって、かっこ良すぎる。
主人公のアダムのヲタっぷりが愛しく、イヴの強さと美しさに何度もハっとさせられました。
わたしは数世紀生きてもイヴみたいな高貴な女性になれないと思う。
「心にとらわれて生きるのは時間の無駄よ」
という台詞、アダムと対照的で強い感じがしてすごく好き。
イヴの人物像憧れます。
内容的には違うけど、昔「インタビューウィズヴァンパイア」何度も見ては「あたしも吸血鬼なりたい!」と思っていた気持ちが蘇ってきてしまいました。
吸血鬼たちが人間の血を飲んだ直後、目が見開いて不気味に笑う描写が格好良すぎて頭から離れない・・・
血を飲むと一体どういう感じになるんだろう?
やっぱり吸血鬼になりたい!!
ジム・ジャームッシュ監督の作品、凄く久しぶりに観させて頂きました。
こんな静かなドラキュラ映画観た事ないです。
特に音楽の演出が見事の一言でした。
登場人物もかなり少なく、非常にシンプルな物語になっており、
ジム・ジャームッシュの世界観がしっかり伝わる映画でした。
50代になって、もう一度見たらまた違う印象になるかも知れないですね。
過去のジム・ジャームッシュ映画を見直します!
ジャームッシュの描く「夜」が好きだ。
そのことに改めて気づいたのだった。
必要最低限の登場人物。必要最低限の音。
人が消えてしまったかのような街をドライブするシーンとか、
たまらなくカタルシスを感じてしまうんですよね。
過去作品の夜も好きですが、今回は吸血鬼が生きる夜ですからね。
そりゃあもう「夜」なわけですよ。
永遠に歳を取らないからこそ生まれる
ゆるやかな時の流れがとても心地よくて、
夢の中をたゆたっているような感覚観ていました。
深く椅子に身体を沈めて、目は半開きで観るのがオススメです。
憎悪する人間たちがいない世界では
生きていけないジレンマと
長く生きてもなお衰えない、生への執着。
世の中にあふれる色んなジレンマが
バンパイアの目を通して、見えた気がしました。
ジム・ジャームッシュは、「中二病」世界ランカーであることが発覚した!
「吸血鬼」「ギター」「機械いじり」「レトロ自動車」「廃墟」「工場」「月」「低血圧」……
すべてのキーワードが「オタクの好きな物」と一致!
シンクロ率400パーセントを超えています!
こいつ日本人のオタクなんじゃないかっていうくらいシンパシー感じまくりの、
しかも「日常系」アニメなのである。
そう、この映画は「日常系アニメ」です。
「ヴァンパイアあるある」でもある。
ヴァンパイアになった気分で見ると爆笑できるし、人間として見たら最高にロマンチックな夫婦像がそこにあります。
ヴァンパイアになりたく存じます。