第43回 天才試写会
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2015.2.27 17時42分

『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』

監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
出演:マイケル・キートン、エマ・ストーン、エドワード・ノートン他
試写会開催日:2015年3月2日(月)18時半開場、18時50分開映
作品公開日:2015年4月10日(金)、TOHOシネマズ シャンテほか 全国ロードショー
(C)2014 Twentieth Century Fox. All Rights Reserved.

STORY

かつてヒーロー映画『バードマン』で一世を風靡したものの、いまや落ち目の中年俳優であるリーガンは、娘と自分のためにもブロードウェイの舞台に挑もうとするが・・・

本作は、かつて大ヒットを記録したヒーロー映画『バードマン』に主演スターとして一世風靡するも、以降くすぶっている中年俳優リーガンの、一発逆転を賭けた復活劇を描いている。

 

主人公である中年俳優リーガンの存在自体が、リーガンを演じた主演のマイケル・キートンそのものの姿とかぶる。彼もまたティム・バートン版『バットマン』でスターの地位を確立したものの、その後は凋落した。その彼が、長年の雌伏の期間を経て、本作の出演で再び現実世界のスターダムへと上り詰めようとしているのだ。先日、アカデミー賞にノミネートされたマイケル・キートンの姿は、映画の画面を超えて現実世界に降り立ったリーガンを思わせる。

 

そんな本作は、アメコミ映画全盛のアメリカ映画界に対する批評でもある。マイケル・キートンは前述したとおり『バットマン』であり、エドワード・ノートンは『インクレディブル・ハルク』、エマ・ストーンは『アメイジング・スパイダーマン』シリーズのグウェンを演じている。そんな彼らを本作では、芸術のエッジに屹立する演劇の舞台役者として起用しているのだ。この皮肉。

 

映画はそんな現実世界とのメタ的な構造を伴って、ひとりの中年俳優の身に降りかかる悲劇と奇跡を描いている。

 

本作の撮影監督は、エマニュエル・ルベツキ。『ゼロ・グラビティ』や『トゥモロー・ワールド』などでみせた超絶長回しを発展させた、驚異の2時間擬似ワンショット長回しで、じわじわと追い詰められていくリーガンの人生そのものを文字通り連続的に捉えていく。

 

面白いのは、彼の身にまとわりつく過去の栄光の影だ。本人と観客のみに視覚化されたその影が、彼を煽り、揺り動かし、破壊していく。そして、内なる声との悲劇的な戦いの末に、ボロボロに崩れゆく彼がたどり着く先に起こした、無知がもたらす予期せぬ奇跡。そして、そんな彼自身の姿が、映画のラストで、一体、誰の目に映るのかをカメラが捉えることで、この映画そのものの奇跡は完成をみるのだ。

 

だからこそ、映画のタイトルは、『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』。

完璧である。

(中井圭/映画解説者、「映画の天才」代表)

『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』

第43回 天才試写会
天才のひとこと

『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』” への18件のコメント

  1. 田久保 彬man
    グラフィックデザイナー
    www.tkbds.jp

    予告の興奮のはるか上を飛んできました。
    納得のアカデミー賞4部門受賞です。

    ため息が出るほど奇跡的なカメラワークと
    鼓動を振り回すドラム音
    そしてやっぱりすごいのは
    さすがのドラマチックなストーリー。
    お話の本線自体がガツンと太いのです。
    どうしたって引き込まれます。

    個人的には音響編集も受賞に値するなあと思いました。
    撮影と並ぶくらい素晴らしいです。
    …胸のあたりでまだあの音が鳴っています。

  2. 緒方誠一man
    D-CORD 代表

    アカデミー賞 作品賞、監督賞、脚本賞など全4部門を制覇した映画で、すでに話題的には知られてる作品ですね。

    ドラムソロが打ち出す音に臨場感を後押しされ、喜怒哀楽感を観ている側にストレートに投げかけられる映像に圧倒されて、映画終了後には良い意味で疲れがどっと出るぐらいのパワーフルな映画でした。

  3. 黒須 美彦man
    CMプランナー
    WOWOWの大人風アニメCM制作。渋い実写ベースのCGで好評だったのですが、突如休止。モデルが僕ら夫婦だったからかな。

    映像体験としてビックリでしたね。編集点のない、カメラ移動によるシームレスな編集というか流れの累積は、長回しという単なる力技ではなく、時間軸を飛ばしたり、現実とファンタジーを行き来したり、うーむ、見る側を幻惑するというか、よくわかんなくなっちゃうことも含めて、巧妙な計画性が敷かれているわけですな。すごいなー、頭が良い。しかも、映像中にも何度か登場するドラマーが荒々しく刻む抑揚が、音の軸になっている。ヒッチコックのロープのワンカット風や、Cノーランのメメントやフォロイングの時間軸崩しから、さらに進化したドラマ創りの新文法かと。でもお金かかりそうだから、真似はできないよね、なかなか。ま、真似しなくてもいいか。

  4. 田中ひとみwoman
    SusieDrops/スタイリスト&デザイナー
    足を怪我しちゃったので足を地につけて 今年は活動していきます(^^)

    とにかく話題の映画!ということでしたが、アカデミー賞4冠。
    納得の、いや それ以上の素晴らしい作品でした。

    カメラワーク、映像、音(ドラムってCooL!!!!!!!!!)、役者、ストーリー、最初から最後までのデザインの全て。
    なんてカッコいいんだろうか。

    スクリーンにぐいぐいと引き込まれていく圧倒的なパワーにやられました。

    映画の始まりのことば。タイトル。
    見終わったあとに脳内が痺れましたね。

    4月10日の公開が待ち遠しいです。

  5. 宮川寿香woman
    CMプロデューサー

    ワンカット風撮影、という触れ込み?に注目してみていて、
    ええ??でもこれはどうやって撮ったの???というびっくりがいろいろでした。
    撮影の裏側をのぞいてみたい…です。
    映画に詳しかったら、さらにもっと楽しめるんだろうなー、ー、ともっといろいろ映画みよう!と思わせられるような作品でした。
    映画に全然詳しくない私は、もうちょっと映画に詳しくなりたいなー、これよりもっと楽しめるのにな
    ドラムメインの音楽と娘役のエマ・ストーンがとても印象的で、ちょっと追ってみたくなりました。
    バードマン、見れてよかったです。

  6. 八幡貴美woman
    CMディレクター

    ワンカットにみせるカメラワーク。
    しかも綺麗、さすがエマニュエル・ルベツキ。
    スピードあって台詞も途切れなく進んで、、
    気がついたら、現実と虚構とリーガンの心の渦中に自分もいる。
    引き込まれ具合がすごい。
    映画の生中継観てるみたい。。。
    もう一回は観ます、

  7. 月原光夫man
    アートディレクター
    もうすぐ5ヶ月の猫と暮らしています。 「ムール」といいます。雄です。かわいいです。

    徹底して「境界」を排除した映画なんだなー、と思いました。

    現実と空想(妄想)の「境界」
    喜劇と悲劇の「境界」
    そもそも映画ジャンルの「境界」
    をなくす。

    つながり続けるカットで映像の「境界」をなくし
    音楽も「境界」なくドラムのビートがつづく。

    いままで観たどの映画にも似てないような。

    「境界」のない世界をのぞいて感じたのは
    どこに重心をおいていいかわからない不安と
    そこでしか手に入らない自由でした。

    こういう挑戦的な作品がアカデミー賞をとるというはすごいですね。
    アメリカすごい。

  8. 山本 梓woman
    For WORKERS DESIGN COMPANY/ ジュエリーデザイナー
    インスタアカウント:ajuyamaju

    誰でもきっと自分の理想と現実の狭間に苦しんだ経験はあるはず。

    以前バットマンを演じたマイケル・キートンは自分自身を演じているような役をどんな心で演じたのだろう。

    驚異の長回しは本当に不思議な魅力的な映像となっていた。

    ただ、本当にそれ以上に後半は物語、主人公に引き込まれていきました。

    全て答えは見る人のなかに委ねられる感じがしました。

    人間の幸せ。

    それも自分の価値観のなかにあるかもしれない。

    一回では見きれない、もう一回見たい作品です。

  9. 石井里幸man
    SE
    ロシアンブルーの猫と暮らし始めました・・・

    長回しに注目とのことでしたが、あまりにも途切れることのない映像と、演出のタイミングの見事さに感心を通り超えてもう笑ってしまいました。

    長回しという技法はあくまで技法の一つであって、それが常にベストな撮り方ということではなく、それをやることによって物語の中で何が際立って、どんな意味を持つかということが重要なんだと思いますが、この映画では映像をシームレスにすることで、現実と妄想のはざまにさえシームレスを与えているかのようで、そのせいで視聴者も主人公と一緒になって混乱を共有しているような不思議な感じになります。

    もはや観るというより体験するという感覚に近かったかも。
    映画を観た後に友人たちで感想を述べあったときは「へ~!そういうこと!?」みたいな発見がたくさんあって、2度楽しめました。
    ぜひ、大勢で観に行ってほしい映画です。

  10. 山川春奈woman
    デザイナー / イラストレーター
    やっとお引っ越しが終わりましたが、まだまだ片付け途中なので、早く落ちつきたいです!

    アカデミー賞を取ったのが話題の作品ですが、映画業界に対する風刺的なニュアンス、現代のSNS社会に対する皮肉っぽい台詞もありつつで、さり気なく随所に考えさせられるポイントが作られていると感じました。

    始まりは、冒頭のタイトルシーンのジャジーなドラム音とそれに合わせて出てくるtypography。ここの部分からビジュアル+効果音がとてもかっこ良く、映画への期待値が高まります。

    ストーリが始まると長回しと映像の凄さに圧巻。映像監督はゼログラビティなどを担当したエマニュエル・ルベツキ。この人やっぱり匠だな〜などと、ただひたすら感心。

    ただ、途中からはその長回しの凄さを忘れる位物語自体にひきこまれて行く不思議。

    個人的に主人公の心情を表すドラムの音がとても胸に響き、鳥肌物でした。映像+音+役者さんの演技が絶妙に絡み合い、心地の良いバランス!

    色々なプロの方々の素晴らしい仕事が重なりあい、納得のクオリティで魅了します。
    ですが、それだけではとどまらず、きちんと心の奥底にじわじわとする感動を残す作品。

    あまり詳細は言えませんが、演技の練習をしているおじさんが主人公に語りかける様に叫ぶ場面が印象深かったな〜。あのシーンまた観たいです。映画館で音と映像の凄さを味わいながら観て頂きたい作品でした!

  11. 小野麻利江woman
    コピーライター
    もう「若手」と呼ばれなくなりました。

    現実と幻覚の境目が見えないことで、
    その二項対立が、逆に頭の中でくっきり浮かび上がりました。
    その他にも、「演劇界と映画界」「舞台上と実生活」
    「リアルな演技とフェイクな演技」など
    いろんな二項対立がちりばめられていて、
    ああ、何層にも重なったテーマをこんなにも自然に料理できるなんて・・・と、
    観て帰ったあと、布団の中で何度も反芻してしまう映画でした!

    あとドラムソロに合わせてでてくるタイポにしびれました。
    先行して観ることができてほんとに良かったです。

  12. 高野晃輔man
    写真家
    facebookページのフォロワーが5000人超えました。

    写真家として見てきた映像のなかで一番刺激的な映画でした。
    空間と時間と音と言葉と人間のシンクロが絶妙で引き込まれっぱなし2時間。
    撮ったカメラマンの感情が伝わってくる素敵な映画です。

  13. 加藤まさたかman
    カメラマン
    地方撮影でのむお酒が大好きです。 https://www.youtube.com/watch?v=UBpcnTi7j_w

    長回しがスゲー!とか、
    ドラムがヤベー!とか、
    クスクス笑ったとか、
    思いつくままに書いたら長文になりそうです。
    なので一点だけ。

    個人的には冒頭の数秒、
    楽屋で精神統一してる後ろ姿がすんごく好きでした。
    美しいし、なんだなんだ!?って一気にひきこまれました。
    昔々に観たフォレストガンプの羽がひらひらと落ちてくるオープニング、
    あれと同じくらいずっと覚えてそうなほどグッときました。

  14. 澤田幸man
    グラフィックデザイナー
    3/10(火)21時頃からUstream放送。 3/14(土)原宿VacantにてVJやります。

    多分どのシーンを切り取ってもこの映画であることがわかる気がします。

    長回し云々はもう最初のシーンからすぐに凄いって感じるけど、
    途中から映像的技術な要素が気にならなくなったことがもっと凄い。

    観れば観るほど新しい発見がありそうな映画。
    早くもう一回観たい。

  15. 針崎勝大man
    シンガーソングライター

    刹那的瞬間の連続

    生きることに切羽詰まったひとりの男の
    人生のもがき方が描かれています。

    長回しで撮影してるからこそでる、
    妙なリアル感と臨場感感に
    まるで自らもキャストのひとりであるような錯覚さえ抱きました。

    さすがの一言では稚拙ですが、
    さすが。

  16. 米田匡男man
    WOWOWシニアエクゼクティブプロデューサー
    母が傘寿を迎えました。

    虚実を彷徨う男を素晴らしい脚本と撮影で描きます。
    「E・ノートンがT・ロスに続いてM・キートンとNYで決戦!」では無いです。
    帰り道「じゃあ、お前は一度くらい輝いたこと有るの?」と耳元で誰かに呟かれました

  17. 橋口幸生man
    コピーライター
    キリン「バタフライ」の広告つくりました。https://cho-henshin.jp/

    「write the future」や「thanks mom」などCM界でも巨匠なアレハンドロ・イニャリトゥ監督ですが、「バードマン」、本当にとんでもないですよ、コレ。内容は好き嫌いあるかもだけど、やり遂げたことの凄さを否定できる人は地球上に1人もいないはず。

    2時間全編が擬似ワンカット、誰もやったことのない企画という点でアカデミーを争った6歳の〜と並び称されていたのも納得。撮影監督のエマニュエル・ルベツキの手腕が大きいのだろうけど、実際これほど撮影監督の作家性がモロに出た作品は珍しく、何も知らずに見ても「ツリーオブライフっぽいな」「ゼログラビティに似てるな」と気づくレベル。元バットマンのマイケル・キートンを筆頭に、Eノートンやエマ・ストーンらヒーロー映画経験者が顔を揃え、物語そのものがハリウッド批評になっているのと同時に、「成功したい」「愛されたい」という普遍的な人の願いについての悲喜劇でもあるので、映画好き/アメコミ好きならずとも興味深く観れる。バードマンのデザインは同郷のギレルモ・デルトロ先生が一枚噛んでいるらしく、この辺りもわかってらっしゃるなー、と。映画と舞台のヒエラルキーとか、NYのショウビズ界の内幕が垣間見れるのも楽しい。本編のストーリーと劇中劇が密接にリンクしているなど構造が凝りまくっていて、複数回の鑑賞は必須。

    ただキートン版バットマンの大ファンとしては、これを演じるキートンを観るのは複雑というか、少し辛いものはあった・・・。大復活を遂げて嬉しくはあるのだけど、僕の脳内では去年のリメイク版ロボコップですでに各賞を総ナメにしていたので、これからのさらなる活躍に期待したいです!

  18. 本多集man
    アートディレクター

    けたたましく打ち鳴らすドラム音、
    スタイリッシュなタイポグラフィ、
    オープニングクレジットからしびれっぱなしでした。

    長回しワンカットの映像は、意識していないと感じないほど自然で、
    だからこそ、ぐっとストーリーに引き込まれていきました。

    自分はまだまだ飛べるのか、、、
    とりあえず、パンイチにはならないように、気をつけていきたいと思います。

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