第46回
天才試写会
2015.9.24 13時15分
『アメリカン・ドリーマー 理想の代償』
監督:J・C・チャンダー
出演:オスカー・アイザック、ジェシカ・チャステインほか
試写会開催日:2015年9月24日(木)18時半開場/19時開映
作品公開日:2015年10月1日(木)TOHOシネマズシャンテ他全国ロードショー
(C)2014 PM/IN Finance.LLC.
STORY
1981年、今日も不穏な事件のニュースで1日が始まるニューヨーク。一代で築き上げたオイルカンパニー“スタンダード・ヒーティング・オイル社”の社長として、脇目も振らず働いてきた移民のアベル・モラレス(オスカー・アイザック)は大切な契約の日を迎えていた。事業拡大のためにユダヤ人の土地の購入を計画、手付金として全財産を支払うのだ。30日以内に残金を渡さなければ、その金は返ってこない。まさに人生を賭けた取引だった。ちょうどその頃、アベルの会社の運転手のジュリアン(エリス・ガベル)が襲われ、積荷のオイルごとトラックを奪われる。何度も続く強奪に、ブルックリンのギャングを父に持つ妻のアナ(ジェシカ・チャステイン)は、「これは“戦争”よ」と息まいて兄に相談しようとするが、クリーンなビジネスが信条のアベルはキッパリと制止する。
『アメリカン・ドリーマー 理想の代償』
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次回試写会のお知らせ
『パスト ライブス/再会』
2024.2.5 16時13分
試写会開催日:2024年2月27日
作品公開日:2024年4月5日(金)
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お問い合わせ/映画の天才委員会(中井圭・石田文子・田尻博美)
ハリウッドにせよインデペンデントにせよ多くのアメリカ映画はその題材に関わらず公開時の世論や時流を反映するものですが、図らずともこの作品は今の日本人こそが観るべき映画に仕上がっています。
主人公は何を選択し、何を得たのか
また何を選択しなかったから何を失ったのか
それら大小ひとつひとつの「選択と結果」に意味が込められています。
サクセス・ストーリーととるか凋落の物語ととるかは観る人次第ですが、今の時代の日本人が観れば誰もがある「同じこと」を連想し、考えてしまう作品ではないかと思います。映画の幕が降りても観ている我々の人生はまだ終らないわけで、答えのない世界(そしてリスクを0にはできない世界)に折り合いをつけて生きていかなくてはいけないという現実を改めて感じました。
高潔か、潔癖か。僕の中でも終わらない問答が頭の中で続いています。
このタイミングでこの作品をチョイスする中井さんはさすがです。
「正義とは何か」という命題がテーマ。暴力で暴力に対抗しない、という理想を掲げ旧体制の石油業界で妨害され翻弄される新しい経営者。時代も国も違うのに、特に今の日本で身近に感じる当世感が迫る。
その問いには答えがない。経営者、妻、従業員、弁護士、検事、競合会社など、それぞれ自分の中で約定され他人からは違う形に見えるのが正義。正解があるとしたら、(主人公も言う)結果はあまり関係なくどう考え行動したかというプロセスの意義かもしれない。人に理解されなくとも。
と、まるでサンデル教授の講義のようだが、結局は相容れない主観の渦の中でどこまで妥協できるかというギリギリのせめぎ合いが、説教臭くないエンターテイメント作として楽しめる。
同時に、オスカー・アイザックの擬態を楽しむ映画じゃないかと思った。何にかと言うと、アル・パチーノへの。静かな時は「ゴッド・ファーザー」のような、がなり立てる時は「スカーフェイス」のように見える。善人悪人紙一重な印象も、意識して役作りしたのではないかな。「インサイド・ルーウィン・デイヴィス」のダメなミュージシャンとも、「ギリシャに消えた嘘」の精悍な青年ともかけ離れた、アルマーニを着た恰幅のいい成り上がりっぷりは見事。最注目の俳優だ。
地位と名声を得るのも、大変です。
とくに80年代のアメリカは、混沌としていて、犯罪や人種や宗教や色々なものが混ざって、生きていくこと自体が必死で、その中で生き抜いて行くためには、いろいろなものを犠牲にする必要があったのかもしれません。幸せを得るために不幸になる、というちょっと哲学的なことを考えさせられます。そして、やっぱり、女は強い!
アベルとアナが着ている服がマジでかっこいい!!と思っていたらオバマ大統領御用達仕立て屋さんがスタイリストだったとは、道理で、かっこいいはずです。
80年代初頭 NY。治安が悪く地下鉄にも気軽に乗れない時代。
移民がアメリカンドリームを目指し全うなビジネスをスタートする事さえむずかしかったと思われる時代背景。
移民である主人公はアルマーニを着用するぐらいの成功を収めていて
さらなるビジネスの拡大を目指し色々な苦難を乗り越えようと奔走する。活字にすると簡単ですが
この映画と共にアメリカンドリームと言うフレーバーのガムをハラハラドキドキでゆっくりと味わって下さい。
甘み、苦味、隠し味、さまざまなフレーバーで良い味だしてます。そんなガム途中で吐き出したくなりますけどね~(笑)
役者さん達のいぶし銀的な演技が光る映画でした。
終始、過度な演出をせず、間だったり、カメラワークだったり
独特の緊張感がある映画だった。
チャンダーの類い稀な才能を感じられた。
シェークスピアは「人生は選択の連続である」と言った。
そして、主人公は「最良の選択をしてきた」と言う。
チャンダーは、
「白黒はっきりした選択なんて、今まで一度もなかった。
いつだってグレーだったんだ。」
とコメントしている。
それがこの映画の全てだと思う。
主人公と、周りの人それぞれの「正義」と
その正義に基づく「選択」と
選択によってもたらされた「結果」。
しかし、オスカー・アイザックの演技は凄かった。
映画を観ている、という感覚をある意味忘れてしまうほどの臨場感、緊迫感でした。
夢への野望と、一寸先に見えてしまった闇の間で揺れる主人公。
ビジネスの成功と守りたい家族との間で揺れる妻。
そしてそんな彼らを取り巻く人物たちの人間ドラマ。
全てが恐ろしいほどに調律されていて、一見静かに見える映像の中の目に見えぬ憤りが爆発してしまいそうな2時間でした。
個人的な楽しみの一つは、妻役ジェシカ・チャステインさんの美貌…
ブロンドの美人が落ち目を感じ焦りを隠しきれない姿が皮肉にもまた美しくて…
そして、高級スーツとアルマーニのコートも見所の一つでした。
勿論、衣装は何も語らないけれど、薄汚いニューヨークの街に映えるあのコートが、彼らの成功を象徴するのだと感じました。
「最も正しい選択をする。」
映画の中で訴えられたこの言葉が、今も私の胸の中に響いています。
来年から社会人を迎える今、舞台設定となった80年代にはまだ生まれてもいない、社会の本当の厳しさを何も知らない学生として、「最も正しい選択」という言葉をキーワードに掲げていきたいと思いました。
今観れて良かったです。
ありがとうございました!
一代でビジネスを軌道に乗せて、いわゆるアメリカンドリームを成し遂げた人公の壮絶な一年を描いているこの作品。日本語のタイトルが「アメリカン・ドリーマー」ですが、英題の「A Most Violent Year」の方がやっぱりしっくりきます。
どんなに最善の道を選んでいるつもりでも、社会に対する影響力を持てば持つほど、そこから引きずり降ろそうとしたり妨害しようとしたりする人たちが現れる。(昨今のニュースを彷彿させます)正義を貫くには「白か黒か」だけでは難しく、きわめてグレーに近い判断をしていかなければいけないのかもしれません。そしてその結果もたらされた成功は、果たして抱いてきた理想とイコールになるのか?そんな問いをされたようにも感じました。
いろいろとぶつかりながらもサポートしあう夫婦の描写とファッションもみどころだと思います!
同じ社長業を営んでいるものとして身につまされる映画でした。
NY版「社長はつらいよ」。
人生は選択の連続。自分がアベルだったら、どんな選択をするか?と考えながら観ました。私だったら、こんなにいろんなものを背負って強く高潔には生きられないなー。アメリカンドリームを叶えるって大変すぎる!!毎日緊張しすぎてムリムリムリ!!って、当たり前ですね。。。
考え方、やり方の違う夫と妻のどちらの強さもかっこよかった。違うからこそ補いあってここまで成り上がってこられた関係が、ある意味ベストパートナー。こういう夫婦、成功者に多そう。
骨太でどっしりとした、濃い人間ドラマでした。面白かったです。
そして、ジェシカチャステイン。「ツリーオブライフ」では聖母のように美しい母親役に心底見とれたけど、それと対極のような今回の強欲妻もほんと魅力的。ぜんぜん違う女のぜんぜん違う美しさ。すごい女優さんですね。
終わった瞬間にズシーンと響きました。
リアリティが好きな私のツボにもグサグサと。
次の日に一緒に釣り行った友達にも勧めてました。
人は正義だけで生きられるのか?
自分にとっての「正しさ」とは何なのか?
私にとっては、この作品が「救い」となりましたが、
見る方にとっては「失望」となるのかもしれません。
※オープニングのシーン、映像と音楽の組み合わせが、とても素敵だなあと思いました。
(わかりやすい)成功を得るための選択。高潔を守る事が、足下をすくわれない事と信じる主人公。自分一人で世界はまわっているわけではないので、様々な人の思惑、行動がアベルを窮地に追い込む。
どこまでどん底に落とすんや!ってほど、落として、それでも正しく生きようとしていて。
自分の想い描いていた夢が破れそうになって。
語弊があるかもしれないけれど、正しい人ってなんだかつまらない。と思いながら
行く末を見守っていました。
最後、妻の汚い金で契約して、元従業員の自殺後もオイルも漏れを一番にケアしたところで、
正しいからつまらないんじゃなくて、アベルから人間の情みたいなものを感じないから違和感を
感じたんだなとわかりました。成功に情は、必要ないのでしょうか?
アベルは、つまらない男だと思いましたが、映画は、ハラハラドキドキ、とても面白かったです!
きました!スカッとした爽快さとは無縁のモヤッと系映画。
どうですこの観終わった後のヘビーな感じ。
鑑賞後の友人たちとの語らいは、皆さん実に溜息がちになっていたのが印象的です。笑
正しさとは何か、それひとつとっても人それぞれ解釈があるもの。
世界中で繰り広げられている争いごとの多くも、お互いが自分の正義感に基づいて行動してたりするのをみると、そのほとんどが単純に正義と悪を区分できない話ばかりだなあと思います。
この映画も「良いも悪いもねぇよ」的なメッセージを持っているわけで、思考を反芻して自分なりの答えを見つける愉しさみたいなものがあるのではないでしょうか。
『アメリカン・ドリーマー 理想の代償』という邦題は映画の内容を実に端的に表現しています。
代償。
それは、何かを得ると同時に何かを失ってしまうもの。
重たい響きです。
琥珀色を基調とした画に、オスカー・アイザックの風貌がぴしゃりとハマり、背中で語る男の辛さがにじみ出て、さながらゴッドファーザーの世界観へといざなわれたかのよう。
なんといってもこの作品、画がかっこいいんです。
主人公のおじさんが守ろうとしたもの、そして支払った代償は何なのか。
じっくりと余韻を愉しみたいと思います。
謙抑的というか、ここまで焦らされる映画はそうないですね。
『ゴッドファーザー』オマージュも嫌味なく。
J・Cチャンダー、名前もかっこいいですね。
憶えておきたいと思います。