第50回
天才試写会
2016.9.21 8時52分
『ハドソン川の奇跡』
監督:クリント・イーストウッド
出演:トム・ハンクス、アーロン・エッカート、ローラ・リニーほか
試写会開催日:2016年9月21日(火)18時半開場/19時開映
作品公開日:2016年9月24日(土)丸の内ピカデリー、新宿ピカデリー他 全国ロードショー
(C)2016 Warner Bros. All Rights Reserved
STORY
2009年1月15日、極寒のニューヨーク上空850mで155名を乗せた航空機を突如襲った全エンジン停止事故。160万人が住む大都会の真上で、制御不能の70トンの機体は高速で墜落していく。近くの空港に着陸するよう管制室から指示がある中、機長サリーはそれを不可と判断し、ハドソン川への不時着を決断。事故発生からわずか208秒の事だった。航空史上誰も予想しえない絶望的な状況の中、技術的に難易度の高い水面への不時着を見事に成功させ、“全員生存”の偉業を成し遂げる。その偉業は「ハドソン川の奇跡」と呼ばれ、サリーは一躍英雄として称賛される、はずだった。
『ハドソン川の奇跡』
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次回試写会のお知らせ
『パスト ライブス/再会』
2024.2.5 16時13分
試写会開催日:2024年2月27日
作品公開日:2024年4月5日(金)
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お問い合わせ/映画の天才委員会(中井圭・石田文子・田尻博美)
濃縮されたイーストウッド節、やはりじんわりきます。音もいい。
試写の帰り道、気持ちいい小雨の中、ビルの角でスーツ姿の男女が抱き合ってる光景を立て続けに見て、いい映画を観た時の余韻を感じました。
映像でかなりドキドキさせられた事は飛行機とNYの街並みが3.11を彷彿させられるぐらいにリアルな大迫力映像で迫って来た事。ストーリーも無駄の無いドキュメンタリーを観ているみたいにストーリーに感情移入させられました。
人が作り上げた物に人が裁かれる時代、汗
ピリリとストイックで、まったく無駄がなく、
かつ、心にガツンと強いものを残すクリントイーストウッド先生。
彼が描く人間の心の機微というか、彼の“人間観”みたいなものが
とても好きなのですが、今回もとても良かったです。
事故が起こった後の、ある種おいしいとこが終わってからはじまる
ストーリー展開。その構成の仕方にものすごく熟練の技を感じました。
そして、注目されること、有名になることって恐ろしいなぁ、と。
でもやっぱり人間は捨てたものじゃない、と思わせてくれる。
先生、まだまだまだまだ映画撮ってくださいね!
この事件が映画化されると聞いた時、元となった話を知っていたので、特に観たいという気になれませんでした。
しかし鑑賞してみて、わざわざ映画の天才で取り上げられた理由がわかりました。
ひとつの事象も、さまざまな観点があることを思い知らされます。
事件の本質は何か。英雄とは何なのか。
この事件をご存知ない方はもちろん楽しめるし、ご存知の方も「どうせこういう話でしょ」といったご自分の先入観と対比すると、さらに楽しめるでしょう。
ひとつの事故が、まるでドキュメンタリーを観ているかのようにリアルに描かれていました。構成にも無駄がなくてものすごく集中して観られて、あっという間に終わってしまった…という感じです。さすがです。
なんだかなあ、かわいそう、という思いもありつつ、やはり最後には人間の素晴らしさ、暖かさを感じさせてくれる、素晴らしい作品でした。
エンドクレジットをしっかり観ていたらまたさらにじんっと、心が暖かくなります… ああ、人間っていいなあ
イーストウッド作品は圧が強い。
今回も圧が強い。
圧の正体は、強い問題意識と徹底した無駄のない演出(スナイパーがスコープで照準を合わせるかのよう)。妥協なきプロフェッショナリズム。
迷いは微塵も感じられない。
86歳にしてこの切れ味、この精度。
エンターテイメントとしても強い。
死ぬまで登り坂ってこういう人のことをいうのですね。
次回作も心から楽しみです。
この事故のことは大体知っていたのですが、その裏側でこんなことがあったのかと改めて考えさせられました。ヒーローの悲哀と、物事は捉え方によっては紙一重であったり表裏一体であることを痛烈に感じました。
時間軸の操作も感情移入の邪魔をすることなく絶妙でした。
グラントリノを観て以来のクリント イーストウッド監督
楽しみにしてました。
無駄なラブストーリーや脱線も無く、アメリカ人のアメリカ人によるアメリカ人の為の映画。
かっこいいアメリカの姿!
2009年の旅客機ハドソン川不時着のニュースは「そんなこともあったかな」程度で僕にとってはおぼろげな記憶でした。結末として「死者は出なかった」という事実をアメリカ人の誰もが知っている中での巧みなストーリーテリング、構成力、そして96分(だったかな?)という短尺にまとめあげた今回の製作チームにはただ舌を捲くばかりです。
劇中、ある”同じシーン”が数回に渡って出てくるにも関わらず、それらが巧みな演出によってまるで違うものに観えることに驚きました。
クリントイーストウッドはとにかく戦争にしても事件にしても個人にフォーカスを当てることでアメリカ全体が抱える問題を表現するのがうまい。今回もさりげなーくサブプライムローンの問題やアメリカのパイロットの給与の問題(最近は人材不足で上昇傾向にあるそうですが)などをインサート。まったく別ジャンルですがマイケルムーア監督の「キャピタリズム」などと合わせて観ても面白いかもしれません。ハドソン川不時着シーンの迫力もさることながら、主人公サリーの置かれた境遇を理解することによってよりスリリングな物語として楽しめるかと思います。
手放しでオススメします。
作品の話から外れてしまいますが上映前の中井さんの解説もすごく興味深かった。舞台が9.11以降のNYであること、これがマイケルベイやあるいは別の監督だったら、などと考えると、よりこの映画をクリントイーストウッドが撮った味わいを楽しめますね。
クリント・イーストウッド監督作というだけで最低でも90点以上は保証されたようなものですが、今回もあたり前のように傑作です。原題は機長のニックネームである「Sully」なので、機長の英雄譚かと思いきや、当然そんな浅い映画ではありません。むしろステロタイプな図式の裏に、どんな人間ドラマがあったかを描き出しています。「英雄」とされた人間を掘り下げていくという意味では、前作「アメリカン・スナイパー」に通じるものがあるけど、読後感はまったく逆。「アメリカン・スナイパー」がアメリカの闇を描いた映画だとすると、今回は「希望」を描いた作品だと僕は思いました。9.11を経験したNYで、ほとんど真逆の結末を迎えたこういう事件が起きたことは、アメリカ人にとって重大な意味があるはず。それを、トランプ大統領が現実味を帯び、世界が分断されつつあるこのタイミンで映画化したこと自体が、イーストウッドの重要なメッセージなのかもしれません(イーストウッド自身はトランプ支持を明言してるのがまた意外)。
ちなみに映画の長さは1時間半ほどとコンパクト。この短尺を的確に演出したイーストウッドと、わずか208秒間で事故に対応したサリー機長の手腕が、重なって見えてしまいました。トム・ハンクスの演技もすばらしく、前主演作「キャプテン・フィリップス」から引き続き、「大変な目に遭う機長や船長」を演じる第1人者になりつつあるなと。
それにしても最初、英雄扱いされたサリー機長がその後、余計なリスクを取ったのでは?とほとんど犯罪者扱いされる展開は、ものすごくアメリカ的で興味深いです。どこまでも厳格に責任を問い、それが数年後、映画として社会に受容される。アメリカの強さは、こういうところにあるのだと思います。本当の英雄は誰なのか?それは映画の結末で明確に語られるので、ぜひご自身で確かめてください。全編IMAXカメラで撮影された大迫力の映像は、大画面での観賞が必須。爆音上映にもピッタリだと思うので、どこかで実現してほしいと思ってます。
ドキュメンタリーみたいな映画。
本物のプロであること。
様々な時代や世間の矛盾はあるけれど。
私の周りにも凄すぎるおじいさんが沢山いますが、その道の、熟練者はスゴイ!
カッコよかった!
緊張感だけで初めから目が潤んでしまい
まるで自分が経験したかのように感じました。
1度は称賛されたヒーローが一転する。
こんなに大きな注目を浴びることはないけど、身近でもない話ではないから
主人公が、追い詰められていく焦燥感や逆転するかもしれないチャンスに気がついてからの展開に胸が踊りました。
凍えるような冷たいシーン。
それが解されていくように向かうラスト。
胸いっぱいに広がる”人と人の善意”による奇跡。
生きていることに改めて感謝できる作品でした。
イーストウッドらしいストイックな演出によって、現代アメリカの「英雄」像を描く本作。
プロフェッショナルがプロフェッショナルを描いた本作は、
”全うする”ということの価値について問うているようにも思えます。
本作で描かれたのは現代アメリカの「英雄」像や「希望」であるけれども、
”全うする”ということは現代社会において失われつつある大切な概念かもしれません。
職業人としての自分を見つめ直すきかっけになる映画です。