第53回
天才試写会

2017.3.15 0時31分
『ムーンライト』
監督:バリー・ジェンキンス
出演:トレバンテ・ローズ、アッシュトン・サンダース、アレックス・ヒバート、マハーシャラ・アリ、ナオミ・ハリス、アンドレ・ホーランド
試写会開催日:2017年3月15日18時半開場/19時開映
作品公開日:2017年3月31日(金)よりTOHOシネマズシャンテほか全国ロードショー
(C)2016 A24 Distribution, LLC
STORY
名前はシャロン、あだ名はリトル。内気な性格で、学校では“オカマ”とからかわれ、いじめっ子たちから標的にされる日々。その言葉の意味すらわからないシャロンにとって、同級生のケヴィンだけが唯一の友達だった。高校生になっても何も変わらない日常の中、ある日の夜、月明かりが輝く浜辺で、シャロンとケヴィンは初めてお互いの心に触れることに・・・
『ムーンライト』
第53回
天才試写会
天才のひとこと
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『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』
2023.1.24 11時04分

試写会開催日:2022年1月30日(月)18時15分開場/18時半開映
作品公開日:2023年3月3日(金)
(C)2022 A24 Distribution, LLC. All Rights Reserved.
お問い合わせ/映画の天才委員会(中井圭・石田文子・田尻博美)
心の奥の方の一番弱いところをずっとサワサワされて、
終始泣きべそをかきながら観ていました。
思いがけず愛のお話で、
美しい恋のお話で、
心が満たされたのか、
心を奪われたのかもわからない、
曖昧で、繊細で、小さな物語でした。
本当に素晴らしかった。
とにかく、心から、
1人でも多くの人とこの気持ちを共有したいと思いました。
ポスターとアカデミー賞の件以外の予備知識ゼロで鑑賞。
一言でも感想を言葉にしちゃうとその箱に入ってしまうようでもったいない。遠くの国で生まれたまったく違う境遇の少年の人生を追体験するるも、どこか自分と繋がっている気がする不思議な映画でした。
あまり詳しくは書かないけどとにかく全編通して思ったことは「ああ、みんな同じなんだ」ということ。映像の美しさやこの時代に公開されたこと、アカデミー作品賞を獲った意味などいろいろな人が語っていますが、なんかそれよりこの「同じなんだ」という感想を大事にしたい。
中井圭さんの話によるとやはりこういった黒人映画(この作品を観たあとだとその言葉すらあまり意味をなさないですが)はあまり日本に入ってくる機会が少ない、ということなのでアカデミー賞の騒動前からこの作品を買い付け、前倒しでの上映に踏み切ったファントム・フィルムさんに感謝したい。国内の広告ビジュアルも作品の中身に寄り添ったものになっていて素晴らしいです。
あとマハーシャラ・アリがハウス・オブ・カードとまったく真逆の役をやっていて役者って本当にすごいなあと思いました。
想像していた映画とはぜんぜん違っていました。
ものすごくパーソナルで、とてつもなく切なく美しい物語。
そして、そのパーソナルな視点というものは、
男女問わず世界中のどんな人種の誰が観ても
共感できるのだということに驚かされた。
主人公シャロンの内面に入り込んで
いっしょに心を痛め、愛されたい受け入れられたいと願い、
何度もキュゥッと心の奥がしめつけられた。
その感覚は、一夜あけた今もまだ続いています。
個人的には、シャロンがケヴィンのダイナー前で
車を降りるとき、整えようもない短い髪を
整えるところが愛しすぎた。抱きしめたくなりました。
きっと、観た人は誰もが
シャロンの純粋さを愛さずにいられないと思う。
とても、とても繊細な作品。中井圭さんが鑑賞前に言っていた、ラ・ラ・ランドが「動」とするなら、ムーンライトは「静」の意味が見終わった後凄くわかりました!
静の中に秘められた、喜びや怒りや悲しみや。それらの想いが非常に丁寧に、淡々と描かれていて、観るものの心をゆっくりと深く映画の中へ誘う様な、そんな作品。
黒人の主人公を扱う映画として、自分の想定していたものとは全く違うアプローチでの作品だったので、そこも衝撃的でした。
色々な要素が絡み合った構成(人種、セクシャリティ、社会)なのですが、やっぱり根底には愛というものがあって、それが思い悩んでいた主人公の気持ちを一瞬にして解きほぐす様な描写が凄く官能的にも描かれている。
この作品のジャンルは?と問われた時に一言で、〜系とは形容しがたく。そしてジャンルというものでくくりたくない様な気持ちにもなって。それがこの作品の魅力なのだなぁと1日たった今日改めて余韻に浸っております。
観終わった後はこの気持ちを大事に育てようという気持になる映画。凄いぞ!
マイアミで生まれた黒人男性の成長を彼を取り巻くごく身近な人々の描写だけで物語が構成され心閉ざした繊細な主人公を通し色々な愛の形が心に訴えかける
いつのまにか頭の固い自分が想像していた黒人社会的映画とは違った人間の永遠のテーマ、愛の映画でした。
面白かった、本当に沢山の方々に観て欲しい映画だと思いました。
「どう生きるかを決めるのは自分自身」
全篇を通し蒼く哀しい雰囲気を纏った
痛いほど現実的で、美しく情緒的な作品。
監督と脚本家の二人がこの映画の舞台となった小さな町で生まれ育った、とか
そういうストーリー以外の背景を含めて、初めて完全体になる映画だな、と思いました。
事前に内容を何もインプットせずに、まっさらな気持ちで鑑賞させて頂きました。
確かに鑑賞前に中井さんがおっしゃっていたように、とても「静」な映画でした。
題材としては、黒人、ゲイ、貧困などセンセーショナルなモチーフにも関わらず、
劇的な事が起こる訳でもなく、静かに心が動かされる映画でした。
シャロン役を3人の役者が演じているにも関わらず、
実際に一人の人間が成長したような錯覚してしまうくらい、
とても演技が素晴らしかったです。
確かにこういう作品をいろんな方に見てもらいたいです。
「黒人が出てきて、ドラッグの売人がでてきたら、それはもうバイオレンス映画なんだろう。」
そんな勝手な先入観が自分の中に存在していたことに気づかされました。
そのため終始、緊張感を持ってきたるべきバイオレンスに備えて鑑賞しておりましたが、要らぬ用心でした。
見終わって気づいたのは、この作品はそんな先入観に対する否定を提示した作品だったということです。
むしろ官能的で繊細。芥川賞的な文学作品に近いという印象を持ちました。
特に心理描写が繊細。
その行間をどう埋めるかは鑑賞者に委ねられるため、鑑賞者側の「文章力」も問われるのかな、と。
そういう意味では人によって評価の高低差が激しい作品なんだろうな、と感じます。
ただ、芸術性が高い作品ほど鑑賞者側の解釈を埋め込むことができる「余白部分」も多いものではないでしょうか。
この映画が当たらないような世の中じゃpoisonだと思いました。
日本でもヒットすることを期待します。
僕が映画に一番求めている、自分ではない人生や生活を体験する。というニーズにバチコンとハマる作品でした。観終わった後は、マイアミの貧困街で暮らすゲイの黒人になっていました。しかし、すべてにおいて繊細。だけど、日本人の繊細さとはまた違う繊細さ。こういう体験ができるから映画はおもしろいですねー。中井さん。
全く何も知らずに観ました。
始まって、
黒人映画なのか〜ドラッグ系かな〜
と思ったが束の間、全然違った。
とても静かで繊細な美しい愛のはなし。
そして私は、
この映画のメインビジュアルが素晴らしいと思った。
三色の顔。あの目。カラー。
まさにムーンライト。
本当に素敵!!!
これから沢山の人が観ると思う、観るべき映画なのだと思いました。
麻薬中毒者を母にもつ少年。過酷すぎる日常に何度も目を背けたくなりながら、この日常を現実社会として過ごしている子達が世界中に沢山いると思うと、とても気が遠くなりました。けれど…
壮絶で過酷すぎる日々の中から見つけ出される小さな幸せの重なりは、とてもシンプルだけど生きていくための大きな核になっていく、映画終盤には春先に感じるような優しい暖かさに心が包まれました。
ジワジワゆっくりと感動が続く素晴らしい作品でした!
ピュア。中学生みたい。
静かで、そのぶん確か。
アカデミー賞の珍騒動で妙な注目を集めってしまった「ムーンライト」、内容は作品賞受賞も当然の傑作でした。賞レースを争った「ラ・ラ・ランド」が動とすれば、こちらは静の映画だけど、美しいラブ・ストーリーという点は共通しています。
貧困や麻薬、いじめ、虐待、そして同性愛をテーマとしてながらも、重々しい政治性・社会性はほとんどない。ある黒人の少年が大人になるまでを、美しく静謐な映像と音楽で描いているのが印象的。麻薬の売人であっても、悪人でも善人でもない、さまざまな側面をもった人物として造型されている。どんな状況であろうとそこで生きる人にとっては日常であり、人間の普遍的な感情があることを教えてくれる。だから日本人の僕たちでも共感できる。こうした視点には、バリー・ジェンキンス(監督・脚本)とタレル・アルバン・マクレイニー(原案)が、ともに貧困地区に育ち、母親が麻薬中毒者だったというバックグラウンドから来ているのだと思う。
主人公の父親代わりの人物が言う「自分のことは自分で決めろ。周囲に決めさせるな」(記憶で書いているので正確な表現ではないです)というセリフが印象的。しかし少年はその後、周囲に自分の運命を決めさせないためにこそ、周囲が黒人に求めるステロタイプを演じざるをえなくなる。黒人映画というと「ストレイト・アウタ・コンプトン」のようなものを連想してしまう自分の偏見を打ち砕かれる思いがした(固定観念を破壊されるというのは、優れたい芸術を観賞するよろこびのひとつだと思う)。こうしたパラドックスは黒人ではなくても、世界中の誰にとっても思い当たるふしがあるものだろう。
賞の結果が必ずしも興行成績に連動せず、黒人映画が当たらないと言われている中、公開日前倒しでの劇場公開を決断した映画会社&関係者の方々に心からお礼を言いたい。観賞後も深い余韻が残る文句なしの優れた作品です。必見!
黒人・ドラッグ・同性愛っていうキーワードで、どこか縁遠い内容かなと思いましたが、どこが舞台でも成り立つような、とても私たちに身近なお話でした。
それはきっとシンプルに「人間」を描いているということなのでしょう。でもその身近さが退屈につながらないのは、繊細な心理描写と映像美なのだろうと思います。
そして、自分の中で年月とともに変わりゆくものと変わらないものということも考えさせられました。
同じ境遇にはなったことないはずなのに、主人公を思って悲しくなって、でも全く同じ気持ちになることができない気がして、また悲しくなりました。言葉だけじゃなくて、表情でいろんなことを物語ってる映画。ひさびさに周りの人にオススメしまくっています。
見たくない現実、聞きたくない言葉、それらを向けられたときの主人公シャロンの瞳。
この映画がすごいのは、台詞が圧倒的に少なくて、目の演技でシーンや感情が語られているところ。カメラワークもすごく良くて、映画を観ていることを忘れるくらいリアルに感じていた。
シャロンの瞳が自分に向けられているようで、何回も苦しい気持ちになった。
でも、シャロンが人生を重ねていく姿になぜか勝手に勇気づけられた。
月の光は、肩書きや環境や人種や性別や色々なものに分け隔てなく誰にも降り注ぐ、優しい光でした。
「目は口ほどに物を言う」の言葉がしっくりくる映画。
集中して一挙手一投足をみた訳でもなく、気付いたらその画に引き込まれていました。
噛みしめすぎてレヴューが遅れましたが、とても余韻の深い素晴らしい映画でした。
心情を描いた叙情的な映像が印象的でした。その行間を読ませる映像に導かれ、物語の核心にふれたとき、「ああ、人の先入観てほんと嫌だな」と、自分の心の裏側を月明かりで照らされたような気がして、とても恥ずかしくなりました。
白日の下でなく、月明かりの下で……そこに人の優しさと、奥ゆかしさを感じる、どこまでも人間らしい作品だと思いました。