第55回
天才試写会

2017.5.26 10時38分
『ありがとう、トニ・エルドマン』
監督:マーレン・アデ
出演:ペーター・ジモニシェック、ザンドラ・ヒュラー
試写会開催日:2017年5月26日(金)18時半開場/19時開映
作品公開日:2017年6月24日(土)よりシネスイッチ銀座、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー
(C)Komplizen Film
STORY
悪ふざけが大好きなヴィンフリートは、今日も存在しない架空の弟“トニ”になりきって変装をし、荷物を届けに来た配達員を驚かせては、静かに喜んでいる。 しかし、最近はなんだか浮かないことが多い。ピアノ教室の生徒からは辞めたいと告げられ、年老いた母も、一緒にいる老犬ヴィリーもなんだか元気がない。コンサルタント会社で働く娘イネスは、勤務地のブカレストから久しぶりに帰ってきたが、仕事に追われて携帯で電話ばかりしている。 ある日、老犬ヴィリーが亡くなり傷心のヴィンフリートは、イネスの元へと押しかけることになるのだが、それが大きなトラブルを引き起こすことに・・・。
『ありがとう、トニ・エルドマン』
第55回
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『パスト ライブス/再会』
2024.2.5 16時13分

試写会開催日:2024年2月27日
作品公開日:2024年4月5日(金)
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お問い合わせ/映画の天才委員会(中井圭・石田文子・田尻博美)
父娘の再生を描いた「感動作」なんですが、「感動」のあり方がおしつけがましくなく、「感動作」嫌いの人にこそ、おすすめしたい映画です。
なんというか、優しさやユーモアの描き方が手にとどきそうな描かれ方をしているんですよね。
同時に非常に政治的な作品でもある。
シャルル・フレジェも撮影した民族衣装もよかったです!
3年前、闘病中の父がいた。
社会人になったばかりの僕は、自分の体がぶっ壊れてしまうんじゃないかと思うくらいに耐えるように働いていた。
何度か父の容態も悪くなった。休日のお見舞いに行くのが憂鬱だった。
仕事以外の時間は、少しでも自分の心を保つために使いたかった。
父は確実に最期の日をどこかで迎えるのだろうと薄々分かっていたのにだ。
毎日、一杯一杯になりながら、その日々に必死に付いてく生活をしていたら、
1年後、父は他界した。
色んな父との思い出と共に、自分の愚かさと無力さを今でも強く感じる時がある。
この映画を見て、僕は父との最後の日々を思い出した。
そしてここでどうでも良い話をしてしまった。
こんな他界した父との話をあまり口に出しては言いたくないけど、この映画を見ると、ここになら吐き出してもいいかな思えた僕がいた。
ありがとう、トニ・エルドマン
本作は悪の侵略者や破滅から世界を救うために勇敢に立ち上がる主人公の物語、というような超大作の映画ではない。しかしながら鑑賞後には圧倒的にトニ・エルドマンに大切な心を救われた気分にさせられる。そして観客を深く感情移入させるこの作品は我々に優しく寄り添い、家族の愛情や温かさを感じさせてくれる。
本作が抉り出す、人間の愛への切望、および現代に生きる人々の苦しみに関する堪え難いあわれみ。
決して大風呂敷ではないこの作品が、世界のたくさんの観客の救世主になりますように。
ユーモアの描写のセンスは日本のコメディアンの空気感に近いような感じもしました。
両親が東京に遊びに来た時、母親がホテルのレストランで酔いつぶれて車椅子で帰った事件、カナダにいる時に語学学校で話したら、中東や南米、ヨーロッパから来た各国の生徒にも爆笑を誘った。
父娘、母息子、親と離れて暮らす人、家族の話は世界のどこかで似たような体験や感覚を共有できるのだな〜と、あらためて。
ユーモア大事!
余白というか空白というか、要所に人物の無言の仕草や視線を映した時のほんのわずかな『セリフのない瞬間』をとても丁寧に捉えていると思いました。こんなに、行間にヒリヒリしたことがない。この適度な、言葉と行間で父と娘の『すれ違い』と『歩み寄り』がとても分かりやすく、リアルに伝わってきます。父の介入によって器量というコップから水が溢れ出し、トニ・エルドマンによって立て直していく娘。僕には息子がいるのですが、何かあった時には、この手法を試してみたいと思います。ありがとう、トニ・エルドマン。
人生というすごろくで、最も愛のある「一回休み」を食らったような感動。
入稿に追われながら半ば無理をして観に行きましたが、
そんなタイミングで出会えてよかったなあ、
あるいはこの年齢で出会えたこともよかったなと、
とにかくお後がよろしかったわけです◎
エンドクレジットが始まる頃、
みんなこの邦題を心のなかでなぞるんじゃないかな。はーと。
“世界は同じ悩みやストレスにおかされている。
救えるのは、小さなユーモアと大きな温もりか──”
ヨーロッパと日本で笑いのツボに違いはあれど、親の愛に違いはない。
田舎に住む両親(74歳)の感想を聞きたくなる映画でした。猫好きの方は、ユーモアあふれる老猫が1頭出ているのでお見逃しなく!
この映画の独特な間合いに引き込まれて2時間42分があっという間に過ぎました。
まるでドキュメンタリーを観てるような不安定さなどが、いい意味で映画らしくない映画です。
脚本も演出も演技もかなり微妙なバランスで成り立っていて絶妙。
人生とは何だろうと考えたことのある人にお勧めです。
そのひとつの答えも聞けます。
会えてよかった。トニ・エルドマン。
最初は「うわー。こんなのがオヤジだったらマジでいや」と
娘側で観ていたはずなのに、いつの間にかトニ・エルドマンが
愛しくてたまらない!なんでしょう、この感じ。
そして観終わってすぐよりも、翌日の朝の方がじわじわと沁みていました。
なんなんでしょう、この感じ。
普段はどうでもよかったり、うざかったり、合わないな~と
思っている家族のことを、ふとした瞬間にものすごく大切だと気づく
その感覚そのもののような映画です。
「義務に追われている間に人生は終わってしまうよ」
ていうお父さんの言葉、沁みたわ~。
日々、社畜として砂を噛むような毎日を送りつつ、
プライベートでは子育て中の自分にとって、
これは身につまされる映画です・・・
ビジネスウーマンとして忙しく働く娘に
ほとんど変質者のようなしつこさでまとわりつく父親。
最初は「なんて最悪なジジィなんだ!」と本気でひいて
娘視点で観ていたのですが、後半はすっかり
お父さんに感情移入して観ている自分に気づき、驚きました。
そしてクケリとの「パパ!」のシーンに号泣。
もう、完全に監督の手のひらでしょうね・・・(苦笑)
さまざまな分断に揺れるヨーロッパの人にとっては、
また違った感想があるのだろうなと想像します。
世界中で評価された作品が、
日本未公開に終わってしまうことも多い昨今、
こういう良作が劇場公開されること自体が
うれしいですね。
このサイトに来るような、目のこえた方にこそ、
観てほしい作品です。
今まで感じていた重力が少し軽くなるような映画でした。
「なぜこうするの?」という質問に対して、「周りはこうなんだからこうしなさい。」と答えが返ってくるような日本では、自分を解放することってかなり難しいと思うんですけど、自分に正直なトニ・エルドマンを見て、僕も自己解放する勇気を貰いました。
僕からもありがとう、トニエルドマンと言いたいです。
心をなくす程仕事づけの娘を心配する冴えない親父に対して、ちっとも優しくない娘。
私はこの娘よりだいぶ年取ってますし、だいぶ環境や仕事の内容も違いますが、やっぱり自分と重ねて見てしまう所はあります。
ただこの親父のスットコドッコイぶり、私は好きです。その絶妙なスタイルのカツラと入れ歯。ブーブークッションのタイミングもいいです。最後の最後でどこで見つけて来たんですかその被り物。どうかいつまでも死なないで。ずーっとそのままバカやっていて。と鼻の奥がつーんとしているうちにあっという間に2時間42分ですか?過ぎてました。
とても自然にジワジワと入ってくる映画でした。ありがとうございました。
中高生の頃の、
自分と父親の関係を思い出しながら見ました。
私が家をでて、東京にきてからは
頻繁に連絡をとったり、毎年帰省したりもしない娘だった私を
もしかしたら、トニエルドマンのような気持ちでみていたのかな、と。
試写から一週間、これを書きながらもいまだじわじわきています。
映画の天才はなるべく事前の情報を入れないようにして見にいくのですが、
鑑賞後、監督が女性と知って膝を打つような思いでした。
イネスのようにちょっと親と疎遠になっている人たちにも
ぜひ見てもらいたいです。
勉強しない子供に「大人になって後悔するよ。」ていうようなものですが、
気づいたときはもう相手はいない、ってこともあるのですから。
そんな思いになった映画です。
がっつりファザコンの自分としては、父を思わずにはいられない作品でした。
何度も声を出して笑ってしまうほど小気味よくちりばめられたユーモアと
随所に現れる小道具のノスタルジックな可愛さに、すっかりやられてしまいました、好きです。
私達は時々、自分じゃない振りをして初めて、素直になれる。
特に家族は近くて近すぎるものだから。
映画を見てそんな風に思いました。
家族を愛していきたいものです。お父さん100歳まで生きて。
「このまま人生が終わってしまって良いのだろうか」と感じた覚えがある人なら、きっと観た方がいい。トニ・エルドマンに出逢えば、もう一度、無邪気だったあの頃に戻ることができる。セメントで塗り固めたかのような肩肘を、優しく溶かしほぐしてくれる作品。