加速。

いよいよ流れが加速している。普通、時流の真っ只中に身を置いていると、その流れを実感するのが難しいのだけれど、今は不思議と手に取るように動きがわかる。現在、取り組んでいる映画『ナイト・ウォッチ』の宣伝企画で、自分の歩の進め方を掴んだことが大きい。もう迷いはない。このまま歩み続けるので、みなさんよろしくお願いします。
さて、写真は日本武道館で行われた映画『ナルニア国物語 第1章 ライオンと魔女』ジャパンプレミアのリハーサルの模様。配給のブエナビスタさんとコラボレーションして、いくつか企画を仕掛けているのだけど、そのうちの一つとしてジャパンプレミア試写会の舞台裏に完全密着した。おそらくフジテレビのエンタメ最強番組“めざましテレビ”さんよりも密着したはず。その関係で、リハーサルとしてワイヤーで吊り上げられているのは僕と一緒に映画情報番組でMCをやっているタレントの八田ちゃん。スカートだったのだけど、「人生で一回くらいしかないと思うから」とのことで、吊り上げ敢行。大丈夫です、見えてなかったよ。このジャパンプレミア中、カーペット上のセレブに対するサウンドバイツやキャストの移動中のコメント撮りなど、初めてづくしの八田ちゃんだったけれども、一生懸命頑張っていて、ちょっと感動。僕が初めてのとき、そんなに上手くは出来なかったことを考えると、できる人はやっぱり違うのかなと思う。
 
僕は、この日の午前中、白い魔女役のティルダ・スウィントンに単独インタビューをして、その際にジャパンプレミアに密着する旨を伝えていたのだけど、それをちゃんと覚えていてくれて、現場でも彼女とコミュニケーションをとる事ができた。ティルダ・スウィントンという女優、この作品以外にも『コンスタンティン』で大天使ガブリエルを演じるなど、独特の雰囲気を生かした高貴で人間離れした役どころがばっちりハマる。個人的にも注目していたのだけど、今回の白い魔女も完璧なキャスティング。ここまでメジャーではなく、インディペンデント系作品に出ることが多い彼女らしく、映画に対する非常に高いこだわりと、内包するアツさを絶妙にクールダウンさせるウィットに富んだトークを披露してくれた。魅力溢れる人です、ホントに。ちなみに、今回の主人公4人についても無事、片言英語でコンタクトをとることに成功。英語力は大切だなと痛感する一日だった。
 
そして、もはや打ち合わせだけで50時間を超えた、ある意味とんでもない企画、『ナイト・ウォッチ』TV(仮)の撮影一日目を迎えた。ロシア国内でそれまで過去最高の興行成績を記録していた作品に対して一気に8倍の興行成績をたたき出したロシア史上最強のモンスタームービーともいえる『ナイト・ウォッチ』の特別企画をいよいよカタチにするということで、気合の乗りも十分。限られた時間と少ない予算との戦いの中で、できる限りの最善を尽くそうとスタッフそれぞれが努力を続けてきた企画ゆえ、自ずと撮影自体にも力が入る。この日の撮影は、手配した俳優たちを集めてのもの。企画に対して彼らのテンションも高く、こちらの望む以上の展開。この企画内容はまだ秘密だけれど、理屈抜きに実に面白い撮影だった。この場の空気感がしっかり映像化されますようにとキャラ違いだけれど思わず祈った。まだまだ撮影は続くし、山場はこれからだけど、この調子でいけば想定通りの画になりそうな予感。それであれば、きっと誰かに届くものになるだろう。
 
撮影があけたらすぐにインタビュー。今度は『かもめ食堂』の荻上直子監督。PFFで受賞して、話題作『バーバー吉野』を撮影、先日、取材した関めぐみちゃん主演の『恋は5・7・5』でも監督をつとめている才媛。PFFといえば、昨年最大の発見、内田けんじ監督もPFF出身。そんなこんなで期待値を高めながらお話を伺う。まず興味深かったのは、彼女の経歴。映画大国アメリカの中でもUSC卒という、いわゆる映画エリート。USCといえば超有名な映画界の東大。僕の友人にもUSC卒の子がいるのだけど、その彼女がどこで働いているかというと、あのスティーブン・スピルバーグやジェフリー・カッツェンバーグでお馴染みのスタジオ、DreamWorks。まさにハリウッドの登竜門的な位置づけであるUSCともなれば、学年に日本人は1人いるかいないかという、いわばその筋の難関。そんなキャリアを持ち帰った彼女がどんな映画を撮っているかというと、これがまた良い意味で非常に気が抜けた作品。荻上監督とも話したのだけれど、彼女の作る世界観がどこか鳥山明の「Dr.スランプ」に通ずるものがあると感じている。絶妙な間といい空気のユルさといい、女性的だけれども不必要には繊細ではないところが彼女の撮る映画の魅力だと考えている。キャスティングも絶妙で、今回の『かもめ食堂』では、小林聡美さん、片桐はいりさん、もたいまさこさんをむかえて、全編フィンランドロケという、これまでの邦画では考えられない展開の作品となっている。北欧好きの人は是非観てください。
 
執筆:中井 圭